宮城県南部に位置する 白石市 の名物麺料理として知られるのが「白石温麺(うーめん)」である。一般的にはラーメンとは別系統の和風麺料理に分類されるが、地域の麺文化を語る上で欠かせない存在であり、中華麺文化との比較や融合的視点からも注目されている。
白石温麺の起源は江戸時代初期にさかのぼる。病弱な父親のため、消化に良い食べ物を求めた息子が油を使わずに作った麺を考案したのが始まりと伝えられている。通常の素麺や手延べ麺は製造時に油を用いるが、温麺は油を使わず仕上げるため、あっさりとして胃に優しい。この製法上の特徴が、滋養食・療養食としての性格を強め、地域に定着していった。
長さが約9センチと短い点も大きな特徴である。これは鍋や釜で茹でやすく、子どもや高齢者でも食べやすいよう配慮されたものとされる。食感は滑らかでコシは穏やか、つるりとした喉越しが際立つ。こうした性質から、日常食としてだけでなく、冠婚葬祭や贈答品としても重宝されてきた。
食べ方は温かい汁物仕立てが基本で、醤油や味噌、鶏出汁、野菜出汁など家庭や店ごとに味わいが異なる。鶏肉、しいたけ、卵、季節野菜などを合わせ、素朴ながら滋味深い一杯に仕上げる例が多い。夏場には冷やして食べることもあり、季節対応力の高さも魅力の一つである。
近年は観光振興の一環として、地元飲食店が創作温麺メニューを展開する動きも見られる。カレー味、担々風、クリーム仕立てなど和洋中を横断したアレンジが登場し、若年層や観光客への訴求力を高めている。また中華麺に近いスープ構成を採用した“ラーメン風温麺”も提供され、地域麺文化の新たな可能性を示している。
白石温麺は、油を使わない製法、短い麺線、身体に優しい味わいという独自性を持ち、単なる地方麺料理を超えて白石の歴史と家族愛の物語を背負った食文化として受け継がれてきた。素朴でありながら応用力に富み、現代的進化も続けるこの麺は、東北の麺文化の奥行きを物語る存在といえるだろう。