神奈川県南東端、三浦半島の先端に位置する港町 三崎港 は、全国でも屈指のマグロ水揚げ量を誇る漁港として知られている。遠洋漁業の拠点として発展してきたこの港は、観光地としても人気が高く、「三崎のマグロ」は地域ブランドとして確固たる地位を築いてきた。そうした港の魅力をさらに発信し、地域活性化につなげようという思いから誕生したのが「三崎まぐろラーメン」である。
このラーメンは、地元の料理人たちで組織された 三浦中華料理研究会 によって考案された、新しいご当地ラーメンの一つである。観光客に分かりやすく“マグロの町・三崎”を印象付ける料理を作ろうと試行錯誤が重ねられ、地域食材を前面に押し出した現在のスタイルが確立された。
三崎まぐろラーメンには明確な定義が設けられている。第一に、スープにマグロから取った出汁を使用すること。アラや骨、頭部などを丁寧に煮出し、魚介特有の旨味を抽出する。臭みを抑えながらコクを引き出す技術が求められ、店ごとの工夫が味の個性を生むポイントとなっている。第二に、トッピングにもマグロを用いること。漬け、炙り、角煮風、つみれなど調理法は多彩で、同じ“まぐろラーメン”でも表情は大きく異なる。
スープの味付けは塩や醤油が中心で、マグロ出汁の繊細な風味を損なわないよう比較的あっさりと仕上げる店が多い。中華麺との相性を考慮しつつ、和風出汁ラーメンに近い方向性を持つ一杯も見られる。脂の強さよりも魚介の旨味と香りを楽しむ設計で、海の町らしい清涼感のある後味が特徴だ。
提供店舗は主に三崎港周辺に集中しており、地元の中華料理店や食堂、観光客向け飲食店などで味わうことができる。港町観光と食べ歩きを結び付ける役割も担っており、マグロ丼や寿司とは異なるアプローチでマグロ文化を体験できる点が評価されている。
三崎まぐろラーメンは、伝統的に自然発生したご当地ラーメンとは異なり、地域振興を目的に“戦略的に生み出された麺料理”という側面を持つ。しかし、その土地ならではの食材を軸に据え、複数店舗が工夫を凝らして発展させている点で、すでに地域食文化の一角を占める存在となりつつある。
マグロの水揚げで栄えた港町の誇りを一杯に込めたラーメン――三崎まぐろラーメンは、海と観光と中華料理が融合して生まれた、三浦半島ならではの新世代ご当地麺といえるだろう。