「妙高とん汁ラーメン」@妙高市

妙高とん汁ラーメンは、新潟県西部の山間地域に位置する 妙高市 の食堂やドライブインなどで提供されている、ご当地色豊かなラーメンである。豪雪地帯として知られる妙高エリアの気候風土を背景に生まれた一杯で、味噌仕立ての豚汁に中華麺を合わせるという、郷土料理とラーメン文化を融合させた独特のスタイルが特徴となっている。

ベースとなるのは、日本各地で親しまれている家庭料理「豚汁」。豚肉の旨味を軸に、味噌でコクを加え、野菜の甘味を引き出した滋味深い汁物だ。妙高とん汁ラーメンでは、この豚汁をそのままスープとして応用し、ラーメンとして成立させている。一般的な味噌ラーメンのように中華鍋でスープを合わせるのではなく、大鍋で仕込まれた豚汁を用いる店も多く、より家庭的で素朴な味わいに仕上がるのが大きな魅力である。

具材には、豚肉のほか、大根、ニンジン、ゴボウ、ジャガイモ、タマネギといった根菜類がふんだんに使われる。さらに豆腐やこんにゃくが入ることも多く、食べ応えは十分。これらの具材は雪深い地域で保存が利き、冬場の栄養源として重宝されてきた食材でもある。ラーメンのトッピングというよりは、完全に「豚汁の実」が主役級の存在感を放つ点が、他のご当地味噌ラーメンとの違いといえる。

麺は中太麺からやや太めのものが用いられることが多い。具沢山で粘度のある味噌スープに負けない存在感を持たせるためで、もちもちとした食感が豚汁のコクとよく絡む。店によってはうどんに近い感覚の満腹感があり、「食事」としての性格が非常に強いラーメンでもある。

誕生の経緯は、厳密な「発祥店」が特定されているタイプではなく、地域の食堂文化の中から自然発生的に広まったとされる。スキー客や観光客、土木関係の作業員など、寒冷地で働く人々の体を温める料理として豚汁が重宝され、そこに中華麺を入れて提供したのが始まりといわれる。妙高は 妙高高原 をはじめとするスノーリゾートを抱えており、冬季の来訪者向けメニューとしても定着していった。

味わいの印象は、一般的な味噌ラーメンよりも塩味が穏やかで、野菜の甘味と豚肉の脂が前面に出る、柔らかく包み込むような風味。ニンニクやラードでパンチを出す札幌系とは対照的に、どこか家庭料理的な安心感がある。七味唐辛子や一味を振って味を引き締める食べ方もよく見られる。

提供店舗は市内各所に点在し、食堂、定食屋、温泉施設併設レストラン、スキー場の食事処などで冬季限定メニューとして登場することが多い。通年提供する店もあるが、やはり需要が高まるのは積雪期で、「雪国のラーメン」としての季節性が色濃い。

妙高とん汁ラーメンは、観光振興目的で組織的に売り出されたご当地ラーメンとは異なり、生活文化の延長線上で育まれてきた素朴な存在である。保存食中心の根菜、体を温める味噌、エネルギー源となる豚肉――それらを一杯に凝縮し、さらに中華麺を合わせることで、寒冷地仕様の実用的な麺料理として完成した。

豪雪地帯の暮らしが生んだ知恵と温もりを体現する妙高とん汁ラーメンは、派手さこそないものの、地域に深く根差した“食べる郷土史”ともいえる存在である。冬の妙高を訪れた際には、冷えた体を芯から温めてくれる一杯として、その真価を実感できるだろう。

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