富山ブラックは、富山県を代表するご当地ラーメンであり、その最大の特徴は“真っ黒”と形容される濃口醤油スープにある。発祥の地は富山市中心部とされ、戦後復興期の労働者文化の中で生まれた。肉体労働に従事する人々が汗で失う塩分を効率よく補給できるよう、通常のラーメンよりもはるかに塩分濃度を高めた味付けが採用されたのがルーツである。
元祖とされるのは西町大喜で、創業者が屋台営業からスタートし、労働者向けに「ご飯と一緒に食べるラーメン」として提供したのが始まりと伝えられる。スープは濃口醤油をベースに、豚骨や鶏ガラの出汁を合わせるが、出汁感よりも醤油のキレと塩辛さが前面に出る設計となっている。表面には黒胡椒が大量に振られ、スパイシーな刺激が味を引き締める役割を果たす。
麺は中太ストレート麺が主流で、強い塩味のスープに負けない存在感を持つ。トッピングには厚切りチャーシュー、メンマ、ネギが定番で、特にチャーシューの塩味がスープと一体化し、ご飯のおかずとしての機能を高めている点が特徴的である。実際、白飯を同時注文し、ラーメンを“おかず”として食べるスタイルは富山ブラック文化の象徴とも言える。
そのインパクトの強さから、県外では「しょっぱいラーメン」というイメージが先行しがちだが、近年は観光客向けに塩分を調整したマイルド系ブラックや、魚介出汁を加えた進化系も登場している。とはいえ、地元で長年親しまれてきたクラシックタイプは、あくまで労働食としての実用性とパンチ力を重視した味わいを守り続けている。
現在、富山ブラックは富山県の食文化アイコンとして全国的知名度を確立し、カップ麺化や土産商品化も進むなどブランドとしても成長した。漆黒の見た目、塩味の衝撃、そして白飯と共に完成する食べ方――それらすべてが一体となり、富山という土地の歴史と生活を今に伝えるご当地ラーメンとなっている。