「高岡ラーメン」@高岡市

高岡ラーメンは、富山県西部の城下町・港町として栄えた高岡市で育まれてきたご当地ラーメンである。全国的な知名度では「富山ブラック」に比べて控えめながら、地元では日常食として長く親しまれており、その最大の特徴は“あっさりとした醤油味”にある。透明感のあるスープは鶏ガラや豚骨をベースにしつつも、過度な脂や塩分を抑え、すっきりとした飲み口に仕上げられている。

この軽やかな味わいの背景には、高岡という土地の歴史と生活環境が関係している。高岡は鋳物産業や商業で発展した都市であり、肉体労働者向けの濃厚塩分補給食として発展した富山ブラックとは対照的に、商人や職人、家族連れが日常的に食べられる“飽きのこない味”が求められた。そのためスープは出汁の旨味を丁寧に引き出しつつ、醤油ダレも角を立てない穏やかな配合となっている。

麺は中細の縮れ、あるいは緩いウェーブ麺が多く、あっさりスープとの絡みを重視した設計である。加水率は標準〜やや高めで、つるりとした喉越しを楽しめる。トッピングもシンプルで、チャーシュー、メンマ、ネギ、なると、海苔など王道構成が中心。過度な盛り付けは避けられ、あくまでスープと麺の調和を主役に据える点に、高岡ラーメンの美学が表れている。

また、港町文化の影響から、煮干しや節系出汁をほのかに効かせた店も存在し、後味に海の気配を感じさせる一杯も見られる。とはいえ全体としては“毎日食べられるラーメン”という位置づけが強く、地元住民にとっては食堂や町中華で気軽に味わう生活密着型の存在である。

近年は観光客向けに紹介される機会も増え、富山ブラックとの食べ比べでその対照性が注目されている。すなわち、力強さと刺激を前面に出したブラックに対し、高岡ラーメンは滋味深さと穏やかさを体現する一杯である。派手さはないが、土地の暮らしに根差し、長く愛され続けてきた実直な味わい――それこそが高岡ラーメンの本質と言える。

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