「馬肉チャーシューラーメン」@長井市

山形県南部の長井市では、地域の食文化を色濃く反映したご当地ラーメンとして「馬肉チャーシューラーメン」が知られている。一般的なラーメンでは豚肉のチャーシューが主流だが、長井市では古くから馬肉を食べる習慣があり、その郷土色を生かして生まれたのがこの一杯である。

長井を含む置賜地方は、農耕や運搬に馬が用いられてきた歴史を持ち、役目を終えた馬の肉を無駄なく食す文化が根付いていた。馬肉は低脂肪・高たんぱくであっさりとした味わいが特徴で、煮込みや桜肉料理として親しまれてきたが、それをラーメンの具材として応用した点にこの地域独自の発想がある。

馬肉チャーシューは、馬肉を醤油ベースの甘辛いタレでじっくり煮込んだ「醤油煮」が用いられることが多い。豚チャーシューに比べ脂が少なく、繊維質でしっかりした歯ごたえを持ちながらも、長時間の煮込みによって柔らかさと旨味が引き出される。噛むほどに肉の滋味と醤油のコクが広がり、スープとの相性も良い。

スープは置賜地域らしい、煮干しや鶏ガラをベースにしたあっさり醤油味が主流で、そこに馬肉の旨味が重なることで、見た目以上に奥行きのある味わいとなる。麺は中細の縮れ麺が多く、軽やかなスープとよく絡む構成だ。全体としては濃厚系ではなく、素材の個性を生かした素朴で滋味深い一杯に仕上がっている。

このラーメンは観光向けの奇抜なメニューというより、地域の食文化の延長線上にある“日常のご当地ラーメン”として存在している点が特徴的である。地元食堂やラーメン店で提供され、馬肉文化を知らない来訪者にとっては土地の歴史や食習慣に触れる入口にもなっている。

山形県内のラーメンは、赤湯のからみそ、米沢の手揉み麺、酒田のワンタンメンなど地域ごとに明確な個性を持つが、長井市の馬肉チャーシューラーメンは「具材の地域性」という点で際立つ存在である。馬肉という伝統食材をラーメンに取り入れることで、土地の記憶と現代の麺文化が融合した、長井ならではの味が受け継がれているのである。

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