鶴岡市は、同じ庄内地方に位置するラーメン文化圏として、隣接する酒田市の影響を受けた醤油ベースのあっさり系ラーメンが広く見られる地域である。いわゆる「酒田ラーメン」に通じる、煮干しや焼干しなど魚介出汁を活かした澄んだスープと自家製麺の流れを汲みつつ、独自の発展も遂げてきた。
その象徴的存在が、節類の旨味を前面に打ち出した「鶴岡節系ラーメン」である。これは鰹節や宗田節、サバ節など複数の節素材を組み合わせ、香り高く奥行きのある出汁感を特徴とするスタイルで、従来の煮干し主体とは異なる方向性を示している。
こうした地域独自の味を体系化し発信する目的で、市内の有志ラーメン店によって 鶴岡麺武士会 が設立された。同団体は節系スープの研究や品質向上、地域ブランドとしての周知活動を行い、庄内ラーメン文化の多様性を示す役割を担っている。
酒田のワンタンメン文化とは対照的に、鶴岡では「節の香り」を核とした味づくりが打ち出されており、同じ庄内地方でも都市ごとに個性あるラーメン文化が形成されている点は興味深い。こうした動きは、山形県全体のご当地ラーメンの層の厚さを物語るものともいえる。