「スープ入り焼きそば」@塩原温泉郷

栃木県北部、那須連山の山あいに広がる温泉地 塩原温泉郷 では、ラーメンとは異なる系譜ながら麺文化の一端を担う名物として「スープ入り焼きそば」が伝えられている。観光地の食堂から生まれ、現在も近隣の数軒で提供されるローカルフードであり、温泉街グルメとして根強い人気を持つ。

その名の通り、最大の特徴は“焼きそば+スープ”という独特の構成にある。まず中華麺をウスターソースで香ばしく炒め、キャベツや豚肉などの具材とともに通常のソース焼きそばとして仕上げる。そこへ鶏ガラベースのあっさりしたスープを注ぎ、麺が半ば浸る状態で提供される。焼きそばの香ばしさと、ラーメンスープのような旨味が同時に味わえる、他地域ではあまり見られないスタイルである。

発祥の背景には、温泉観光地ならではの食文化がある。湯治客や観光客にとって、軽食でありながら温かく満足感のある料理が求められたこと、さらに寒冷な山間部の気候に合う汁物需要があったことなどが、この料理の成立に影響したと考えられている。ソースの濃い味付けをスープが程よく和らげ、最後まで飽きずに食べられる点も支持を集めてきた理由の一つである。

麺は焼きそば用の中華麺を使用するため、ラーメンのように強いコシというより、ソースとスープを吸った柔らかな食感が特徴となる。時間とともに味が変化し、食べ進めるうちに“焼きそば”から“スープ麺”へと印象が移ろうのも面白い点である。店によっては胡椒やラー油を添え、味の変化を楽しめるよう工夫している。

現在、このスープ入り焼きそばは 那須塩原市 の地域グルメとして観光PRにも活用されており、温泉巡りと合わせて味わう名物料理として紹介される機会も多い。提供店舗は限られるものの、その希少性も相まって、麺料理愛好家の“ご当地麺巡り”の目的地の一つとなっている。

焼きそばとラーメンの中間に位置するような独創的存在――スープ入り焼きそばは、塩原温泉郷の風土と観光文化が生んだ、温泉街ならではの個性派麺料理といえるだろう。

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