「小田原タンタン麺」@小田原

神奈川県西部の城下町として知られる 小田原市 では、一般的な担々麺とは一線を画す独自系統の「小田原タンタン麺」が提供されている。四川料理由来の胡麻や辣油を前面に出した担々麺とは異なり、甘辛い餡状スープを主軸とする点が最大の特徴で、地域密着型のローカル麺として独自の発展を遂げてきた。

そのルーツとされるのが、1975年に小田原市北部で創業した 中華四川 のタンタン麺である。同店の一杯は、挽肉とザーサイをたっぷり用い、醤油ベースの甘辛い味付けにとろみを加えた餡状スープが特徴。一般的な担々麺のように芝麻醤のコクや強い辛味を前面に出すのではなく、旨味・甘味・辛味が一体となった濃厚な“おかず的スープ”に仕上げられている。

提供スタイルも独特で、丼の中で餡が広がり、その上に麺が浮かぶように盛り付けられる。食べ進めるにつれて麺と餡が絡み合い、味の濃淡や温度変化が生まれるのが魅力である。とろみが強いため最後まで熱々の状態が保たれ、寒い季節には特に人気が高い。

この味に魅了された弟子や関係者が独立開業したほか、直接の系譜にない店でも影響を受けた“インスパイア系”が登場し、小田原市内を中心に提供店が点在するようになった。各店は辛味の強弱、餡の粘度、具材量などで個性を打ち出しつつも、「甘辛とろみ餡+挽肉+ザーサイ」という基本構成を共有している。

小田原タンタン麺は、四川担々麺、日本式担々麺とも異なる第三の担々麺文化といえる存在である。町中華の技術と地域嗜好が結び付いて生まれた一杯は、観光客よりも地元客に支えられて発展してきた。濃厚で食べ応えがありながら、どこか家庭的な親しみを感じさせる味わい――それが小田原タンタン麺の本質といえるだろう。

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