「竹岡式ラーメン」@富津・君津

竹岡式ラーメンは、千葉県内房エリア・富津市竹岡周辺で生まれたご当地ラーメンで、「千葉三大ラーメン」の一角に数えられる独自系統である。発祥店は戦後まもなく創業した梅乃家とされ、漁業や海運業で働く人々のための実用食として発展した。最大の特徴は、一般的なラーメンのように豚骨や鶏ガラ、魚介で長時間出汁を取らない点にある。

竹岡式のスープは、チャーシューを煮込んだ際の醤油ダレ(煮汁)をベースに、お湯や簡易スープで割って作る極めて簡素な構造を持つ。つまり「出汁ラーメン」というより、煮豚の旨味を核にした醤油スープである。見た目は非常に色濃く塩分も高めだが、動物系出汁の重厚さが少ないため後味は意外と軽い。この“しょっぱいが重くない”独特のバランスが竹岡式の個性となっている。

具材の主役はもちろんチャーシューで、厚切りかつ量も多い。肉の旨味がそのままスープに溶け出し、ラーメン全体の味を決定づける。さらに特徴的なのが刻み玉ねぎで、生のまま大量に乗せられる。玉ねぎの辛味と甘味が濃い醤油味を中和し、清涼感を与える役割を担う。背脂ラーメンのネギとは異なり、塩分緩和と味変が主目的である。

麺にも独自性がある。竹岡式では乾麺を用いる伝統があり、これは戦後当時、近隣に製麺所がなく生麺流通が未発達だった事情に由来する。保存性が高く調理が早い乾麺は港町の忙しい食堂に適していた。乾麺特有の強いコシとざらついた表面は、濃い醤油スープをよく吸い、結果として竹岡式特有の食感を形成した。現在では生麺を使う店もあるが、老舗ほど乾麺文化を守る傾向が強い。

味の構成を整理すると、醤油の塩気は強烈、脂は控えめから中程度、甘味はチャーシュー由来、出汁感は弱めという設計になる。そのため単体で味わうより、白飯と合わせる食べ方が好まれることも多い。実際、労働者が短時間で塩分とエネルギーを補給する目的に合致した内容であり、漁師や港湾作業員に支持されてきた背景がある。

現在、竹岡式は竹岡周辺だけでなく、富津・君津・木更津へと広がり、都市部では出汁を補強したアレンジ型や背脂追加型なども登場している。それでも「チャーシュー煮汁主体」「刻み玉ねぎ」「濃口醤油」という三要素が守られていれば竹岡式と認識されることが多い。

総じて竹岡式ラーメンは、豪華な素材や技巧から生まれたのではなく、港町の労働文化、流通事情、時短調理という合理性から成立したラーメンである。簡素で荒削りながら唯一無二の個性を持ち、日本のご当地ラーメンの中でも生活史的価値の高い存在として評価されている。

にほんブログ村 グルメブログ ラーメンへ
にほんブログ村

にほんブログ村 グルメブログ 東京ラーメン食べ歩きへ
にほんブログ村

にほんブログ村 グルメブログ 関東ラーメン食べ歩きへ
にほんブログ村


ラーメンランキング

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする